夕飯の時間のこと。
子どもたちが生まれたばかりの頃、
というより、離乳食が始まった頃は、
毎回スプーンで食べさせていた。
外食に行けば、
床もテーブルもぐちゃぐちゃ。
妻と交代で食べて、
自分のカレーは冷めて、
ラーメンはだいたい伸びていた。
「まぁ、今はこんなもんだよね」
そう思っていた。
でも今は違う。
小学生になった2人は、
当然のように自分でご飯を食べている。
長男は、
自分でインスタントラーメンを作るし、
リンゴも剥いて食べる。
いつの間にか、
「手伝う側」から
「横で見てる側」になっていた。
そんなことを考えながら、
夕飯を食べていた。
特別なメニューでもない、
いつものご飯。
次男が、
黙々とご飯を掻き込んでいるのを見て、
ふと、思った。
「あぁ、成長したな」
そのまま少し、
じっと見ていたら。
次男が顔を上げて、
一言だけ言った。
「なに?」
「いや、別に……」
それだけ返して、
そのまま夕飯は続いた。
何かを話したわけでもないし、
感動的なやり取りがあったわけでもない。
ただ、
自分がいつの間にか
「大人側」に完全に移っていたことに、
その一言で気づいただけだった。
子どもは、
昨日と同じようにご飯を食べていただけ。
変わったのは、
たぶん自分のほうだった。
こういう何でもない瞬間で、
時間はちゃんと進んでいる。
それだけの話。
「辛いのは今だけ」って言う人がいる。
たぶん、それは本当なんだと思う。
でも、
その「今」はずっと形を変えながら続いていく。
楽な時期なんて、
結局なかった気もする。
それでも、
こうして成長に気づく瞬間があると、
過去の自分は、
ちゃんとそこにいたんだなと思える。
今日はそれで十分だった。
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